X線作業主任者の過去問の解説:測定(2024年10月)
ここでは、2024年(令和6年)10月公表の過去問のうち「エックス線の測定に関する知識(問21~問30)」について解説いたします。
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問21 放射線に関連した量とその単位の組合せとして、誤っているものは次のうちどれか。
(1)電流 ……… A
(2)線減弱係数 ……… m-1
(3)LET ……… keV・μm-1
(4)エネルギー・フルエンス ……… J・sec-1
(5)W値 ……… eV
(1)は正しい。電流(A:アンペア)は正しいです。
(2)は正しい。線減弱係数(m-1)は、長さに対する減弱を表すため正しいです。
(3)は正しい。LET(線エネルギー付与)は、 keV/μm(エネルギー/距離)で正しいです。
(4)は誤り。エネルギー・フルエンスの単位は J・m-2(エネルギー/面積)が正しく、J・sec-1は誤りです。
(5)は正しい。W値(1個の電子対を生成するのに必要なエネルギー)は、eVで正しいです。
問22 次のAからDの放射線検出器について、その出力が放射線のエネルギーの情報を含むものの全ての組合せは(1)~(5)のうちどれか。
A 比例計数管
B GM計数管
C 半導体検出器
D シンチレーション検出器
(1)A,B
(2)A,C,D
(3)B,C
(4)B,C,D
(5)A,D
エネルギー分析とは、放射線検出器に入ってきた放射線エネルギーが何eVなのかを分析することです。
A比例計数管、C半導体検出器、Dシンチレーション検出器は、エネルギー分析が可能な検出器です。
問23 被ばく線量測定に用いる放射線測定器とこれに関係の深い用語との組合せとして、誤っているものは次のうちどれか。
(1)蛍光ガラス線量計 ……… 写真作用
(2)電離箱式PD型ポケット線量計 ……… 充電
(3)熱ルミネセンス線量計(TLD) ……… グロー曲線
(4)半導体式ポケット線量計 ……… 空乏層
(5)光刺激ルミネセンス(OSL)線量計 ……… 可視光刺激
(1)は誤り。蛍光ガラス線量計は、紫外線の刺激により発光を利用するものです。写真作用は、関係の深い用語ではありません。
(2)は正しい。電離箱式PD型ポケット線量計は、充電に基づいて動作します。
(3)は正しい。TLDの測定では、グロー曲線を解析し、線量測定を行います。
(4)は正しい。半導体検出器は、空乏層で生成された電子を利用して放射線検出を行います。
(5)は正しい。OSL線量計は、可視光刺激によって生じる発光を検出して線量測定を行います。
問24 GM計数管に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)GM計数管には、放射線によって生じる放電を短時間で消滅させるため、消滅ガスとして、少量のアルコール又はハロゲンガスが混入される。
(2)GM計数管では、出カパルスの電圧が他の検出器に比べ、格段に大きいという特徴がある。
(3)GM計数管では、入射する放射線が非常に多くなると、弁別レベル以下の放電が連続し、出カパルスが得られなくなる現象が起こる。
(4)GM計数管の不感時間は、100~200μs程度である。
(5)GM計数管は、プラトー部分の中心部から少し高い印加電圧で使用する。
(1)(2)(3)(4)は正しい。
(5)は誤り。一般に、プラトー部分の中心より少し低い電圧で使用します。
問25 エックス線の測定に用いるNaI(Tl)シンチレーション検出器に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)蛍光物質にエックス線などの放射線が入射したときに放射される蛍光を利用した放射線検出器である。
(2)シンチレータに用いられるNaI(Tl)は潮解性があるため、アルミニウムのケースなどに納められている。
(3)エネルギー特性は電離箱に比べて劣るが、微弱線量率のエックス線の測定に適している。
(4)光電子増倍管から得られる出カパルス波高は、入射エックス線の線量率に比例する。
(5)1つの光子の発生に必要な平均エネルギーは、約30eVである。
(1)(2)(3)(5)は正しい。
(4)は誤り。光電子増倍管の出カパルス波高は、入射エックス線のエネルギーに比例します。線量率には、比例しません。
問26 放射線の測定などについての用語に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)放射線計測において、測定しようとする放射線以外の、自然又は人工線源からの放射線を、バックグラウンド放射線という。
(2)測定器の指針が安定せず、ゆらぐ現象をフェーディングという。
(3)半導体検出器において、荷電粒子が半導体中で1個の電子・正孔対を作るのに必要なエネルギーをε値といい、シリコン結晶の場合は約3.6eVである。
(4)放射線測定器によって一定時間放射線を測定したときの計数値のばらつき(分布)は、ポアソン分布となる。
(5)出カパルスの計数を計測する放射線測定器を用いて低線量率の放射線を測定するときは、時定数を大きく設定して測定する。
(1)(3)(4)(5)は正しい。
(2)は誤り。フェーディングとは、積分型の測定器において、放射線が入射して作用した時点からの時間経過に応じて線量の読み取り値が減少していく現象をいいます。
問27 熱ルミネセンス線量計(TLD)と蛍光ガラス線量計(RPLD)とを比較した 次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)線量読み取りのためには、TLD、RPLDの双方とも、専用の読み取り装置が必要である。
(2)RPLDの方が、TLDより素子間の感度のばらつきが少ない。
(3)線量を読み取るための発光は、TLDでは加熱により、RPLDでは緑色レーザー光照射により行われる。
(4)線量の読み取りは、RPLDでは繰り返し行うことができるが、TLDでは、線量を読み取ることによって素子から情報が消失してしまうため、1回しか行うことができない。
(5)素子の再使用は、TLD、RPLDの双方とも、使用後、高温下でのアニーリングにより可能となる。
(1)(2)(4)(5)は正しい。
(3)は誤り。線量を読み取るための発光は、TLDでは加熱により行いますが、RPLDでは紫外線照射により行われます。
問28 GM計数管式サーベイメータによりエックス線を測定し、1,200cpsの計数率を得た。
GM計数管の分解時間が100μsであるとき、数え落としの値(cps)に最も近いものは次のうちどれか。
(1)60
(2)80
(3)100
(4)120
(5)160
答え(5)
GM計数管式サーベイメータを用いて測定を行うと、分解時間内に数え落しが起こり、真の計数率(本当の計数率)と異なる値を示します。
真の計数率を求める公式は次の通りです。
M=m/(1-mt)
Mは真の計数率を、mは実測の計数率を、tは分解時間を表します。
それでは、問題文の数値を公式に代入して、計算していきましょう。
分解時間の100μsを、秒に直すと0.0001sです。
M=1,200[cps]/(1-1,200[cps]×0.0001[s])≒1,364[cps]
真の計数率は、1,364cpsだとわかりました。
今回求めたいのは、数え落としの値ですので、真の計数率から実測の計数率を引きます。
1,364[cps]-1,200[cps]=164[cps]
したがって、数え落としの値は(5)160です。
問29 あるエックス線について、サーベイメータの前面に鉄板を置き、半価層を測定したところ4.5mmであった。
このエックス線のおおよそのエネルギーは(1)~(5)のうちどれか。
ただし、エックス線のエネルギーと鉄の質量減弱係数との関係は下図のとおりとし、loge2=0.69とする。
また、この鉄板の密度は7.8g/cm3とする。
(1)60keV
(2)70keV
(3)80keV
(4)90keV
(5)110keV
答え(5)
この問題は、鉄の質量減弱係数を求めて、グラフからエックス線のエネルギーを読み取るものです。
問題文では「半価層を測定したところ4.5mm」とありますが、後で計算に使う「鉄板の密度は7.8g/cm3」の単位と合わせるため、cm単位に直します。
4.5[mm]÷10[mm/cm]=0.45[cm]
続いて、半価層の関係式「減弱係数μ×半価層h=loge2」を用いて鉄板の減弱係数を計算します。
また問題文には「loge2=0.69」とありますので、μ=0.69/hとして計算します。
μ[cm-1]=0.69/0.45[cm]
μ[cm-1]≒1.53[cm-1]
続いて、質量減弱係数の関係式「質量減弱係数μm=減弱係数/密度」を用いて鉄の質量減弱係数を計算します。
先ほど求めた鉄板の減弱係数1.53cm-1と、問題文で与えられている「鉄板の密度7.8g/cm3」を代入します。
μm[cm2/g]=1.53[cm-1]/7.8[g/cm3]
μm[cm2/g]=0.196[cm2/g]
これで鉄の質量減弱係数は、およそ0.196cm2/gだとわかりました。
これをグラフに当てはめると、このエックス線のおおよそのエネルギーは(5)110keVだと読み取れます。
問30 放射線防護のための被ばく線量の算定に関する次のAからDの記述について、正しいものの全ての組合せは(1)~(5)のうちどれか。
A 外部被ばくによる実効線量は、法令に基づき放射線測定器を装着した各部位の1cm線量当量及び70μm線量当量を用いて算定する。
B 妊娠中の女性の腹部表面の等価線量は、腹・大腿(たい)部における1cm線量当量により算定する。
C 皮膚の等価線量は、エックス線については70μm線量当量により算定する。
D 眼の水晶体の等価線量は、エックス線については1mm線量当量により算定する。
(1)A,B,C
(2)A,C,D
(3)A,D
(4)B,C
(5)B,D
Aは誤り。外部被ばくによる実効線量は、1cm線量当量により算定します。
Bは正しい。
Cは正しい。
Dは誤り。眼の水晶体の等価線量は、1cm線量当量、3mm線量当量又は70μm線量当量のいずれか適切なものにより算定します。
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