X線作業主任者の過去問の解説:生体(2022年4月) | エックス線作業主任者 講習会・通信講座

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X線作業主任者の過去問の解説:生体(2022年4月)

ここでは、2022年(令和4年)4月公表の過去問のうち「エックス線の生体に与える影響に関する知識(問31~問40)」について解説いたします。

それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。

X線作業主任者の過去問の解説:管理(2022年4月)
X線作業主任者の過去問の解説:法令(2022年4月)
X線作業主任者の過去問の解説:測定(2022年4月)
X線作業主任者の過去問の解説:生体(2022年4月)



問31 放射線によるDNAの損傷と修復に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)放射線によるDNA損傷には、塩基損傷とDNA鎖切断があるが、エックス線のような間接電離放射線では、塩基損傷は生じない。
(2)DNA鎖切断のうち、二重らせんの片方だけが切れる1本鎖切断は、細胞死などの重篤な細胞障害に関連が深い。
(3)細胞には、DNA鎖切断を修復する機能があり、修復が誤りなく行われれば、細胞は回復し、正常に増殖を続けるが、塩基損傷を修復する機能はない。
(4)DNA鎖切断のうち、2本鎖切断はDNA鎖の組換え現象が利用されるため、1本鎖切断に比べて容易に修復される。
(5)DNA鎖切断の修復方式のうち、相同組換えは、相同DNA配列を鋳型にして正しいDNA配列を合成する修復であるため、修復時の誤りが少ない。


答え(5)
(1)誤り。エックス線のような間接電離放射線でも、塩基損傷は生じます
(2)誤り。1本鎖切断は通常、細胞に深刻なダメージを与えると考えられていません。一方で、2本鎖切断は、細胞死などの重篤な細胞障害に関連が深いと考えられています。
(3)誤り。細胞には、DNA鎖切断を修復する機能だけでなく、塩基損傷を修復する機能(塩基除去修復など)もあります
(4)誤り。2本鎖切断は、1本鎖切断に比べて修復が難しく、エラーが発生しやすい損傷です。2本鎖切断の修復には、比較的正確な修復である相同組換えや、エラーが発生しやすい非相同末端結合があります。
(5)正しい。相同組換えは、相同なDNA配列を鋳型にして正しいDNA配列を合成する修復方法で、修復時の誤りが少ない修復方式です。



問32 次のAからCの人体の組織・器官について、放射線感受性の高いものから順に並べたものは(1)~(5)のうちどれか。

A 肺
B 汗腺
C 神経線維

(1)A,B,C
(2)A,C,B
(3)B,A,C
(4)B,C,A
(5)C,A,B


答え(3)
放射線感受性(単に感受性ということもあります。)は、放射線影響の受けやすさのことです。
細胞分裂が盛んな組織・器官ほど放射線感受性が高くなります。
放射線感受性の高いものから順に並べると、B汗腺A肺C神経線維の順になります。



問33 放射線の生体影響などに関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)LET(線エネルギー付与)とは、物質中を放射線が通過するとき、荷電粒子の飛跡に沿って物質に与えられるエネルギーをいい、エックス線は高LET放射線に分類される。
(2)全致死線量は、半致死線量の2倍に相当する線量であり、この線量を被ばくした個体は数時間~数日のうちに死亡してしまう。
(3)半致死線量は、被ばくした集団の全ての個体が一定の期間内に死亡する最小線量の50%に相当する線量である。
(4)システイン、システアミンなどのSH基をもつ化学物質は、放射線の生物効果を増大する効果を示す。
(5)線量率効果とは、同じ線量を照射する場合に、線量率を低くすると、放射線の生物効果が小さくなることをいう。


答え(5)
(1)誤り。エックス線は、長い距離に物質に少しずつエネルギーを与える低LET放射線に分類されます。高LET放射線には、アルファ線などがあり、短い距離で物質に多くのエネルギーを与えます。
(2)誤り。全致死線量(LD100は、半致死線量(LD50)の2倍とは限りません。全致死線量とは、全ての個体が死亡する最小線量を指し、個体の種類によって異なります。
(3)誤り。半致死線量(LD50は、被ばくした集団の50%が一定期間内に死亡する線量を指します。「全ての個体が死亡する最小線量の50%」という記述は誤りです。
(4)誤り。システインやシステアミンのようなSH基をもつ化学物質は、放射線の生物効果を低減します。これを防護効果といいます。
(5)正しい。線量率効果とは、同じ線量を照射する場合でも、線量率(単位時間あたりの線量)が低いほど、放射線の生物効果が小さくなることを指します。線量率が低いと、細胞は修復しながら被ばくするため、放射線の生物効果が小さくなるのです。



問34 ヒトが一時に全身にエックス線の照射を受けた場合の早期影響に関する次のAからDの記述について、誤っているものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。

A 1~2Gy程度の被ばくで、放射線宿酔の症状が現れることがある。
B 被ばくから死亡までの期間は、一般に消化器官の障害による場合の方が、造血器官の障害による場合より長い。
C 3~5Gy程度の被ばくによる死亡は、主に造血器官の障害によるものである。
D 10~15Gy程度の被ばくによる死亡は、主に中枢神経系の障害によるものである。

(1)A,B
(2)A,C
(3)B,C
(4)B,D
(5)C,D


答え(4)
A 正しい。1Gy以上の被ばくで、吐き気や嘔吐などの放射線宿酔の症状が現れることがあります。
B 誤り。一般に、消化器官の障害による死亡は、造血器官の障害による死亡よりも早いです。
C 正しい。3~5Gy程度の被ばくによる死亡は、主に造血器官の障害が原因となります。
D 誤り。5~20Gy程度の被ばくで、消化器官の障害が死亡の主因となります。20Gy以上の被ばくによる死亡は、主に中枢神経系の障害によるものです。



問35 生物学的効果比(RBE)に関する次のAからDの記述について、正しいものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。

A RBEは、基準放射線と問題にしている放射線について、各々の同一線量を被ばくしたときの集団の生存率の比である。
B RBEを求めるときの基準放射線としては、通常、エックス線やガンマ線が用いられる。
C RBEは、一般に、放射線の線エネルギー付与(LET)が高くなるにつれて増大し、最大値に達した後はほぼ一定の値となる。
D RBEの値は、同じ線質の放射線であっても、着目する生物学的効果、線量率などの条件によって異なる。

(1)A,B
(2)A,C
(3)B,C
(4)B,D
(5)C,D


答え(4)
A 誤り。RBEは、同じ生物学的効果を引き起こすために必要な基準放射線と試験対象となる放射線の吸収線量の比率であり、生存率の比ではありません。
B 正しい。通常、エックス線やガンマ線などがRBEの基準放射線として用いられます。
C 誤り。RBEはLETが高くなると増大しますが、LETがさらに増すと、RBEが減少します。したがって、RBEが一定になるわけではありません。
D 正しい。RBEの値は、線質以外にも生物学的効果の種類、線量率といった照射条件などによって異なります



問36 放射線による身体的影響に関する次のAからDの記述について、正しいものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。

A 眼の被ばくで起こる白内障は、早期影響に分類され、その潜伏期は3~10週間であるが、被ばく線量が多いほど短い傾向にある。
B 再生不良性貧血は、2Gy程度の被ばくにより、末梢(しょう)血液中の全ての血球が著しく減少し回復不可能になった状態をいい、潜伏期は1週間以内で、早期影響に分類される。
C 晩発影響である白血病の潜伏期は、その他のがんに比べて一般に短い。
D 晩発影響には、その重篤度が、被ばく線量に依存するものとしないものがある。

(1)A,B
(2)A,C
(3)B,C
(4)B,D
(5)C,D


答え(5)
A 誤り。白内障晩発影響に分類され、潜伏期は数年から十数年です。早期影響というのは誤りです。
B 誤り。再生不良性貧血は、骨髄の機能が著しく低下し、全ての血球が減少して起こる貧血です。2Gy程度の被ばくで、すぐに生じるわけではなく、晩発影響に分類されます。早期影響というのは誤りです。
C 正しい。白血病の潜伏期は他のがんに比べて短いことが知られています。
D 正しい。晩発影響には、重篤度が被ばく線量に依存するもの(例:白内障)と、線量に依存しないもの(例:発がん)があります。



問37 次のAからDの放射線影響について、その発症にしきい線量が存在するものの全ての組合せは(1)~(5)のうちどれか。

A 白血球減少
B 永久不妊
C 甲状腺がん
D 脱毛

(1)A,B,D
(2)A,C
(3)A,C,D
(4)B,C
(5)B,D


答え(1)
しきい線量が存在する影響は、確定的影響です。
この中で確定的影響は、A白血球減少、B永久不妊、D脱毛です
C甲状腺がんなどの発がんは、確率的影響ですので、しきい線量が存在しません。



問38 放射線の被ばくによる確率的影響及び確定的影響に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)確定的影響では、被ばく線量と障害の発生率との関係は二次曲線グラフで示される。
(2)確率的影響の発生を完全に防止することは、放射線防護の目的の一つである。
(3)確定的影響では、被ばく線量が増加すると、障害の重篤度が大きくなる。
(4)確定的影響の程度は、実効線量により評価される。
(5)遺伝的影響には、確率的影響に分類されるものと確定的影響に分類されるものがある。


答え(3)
(1)誤り。確定的影響の発生率は二次曲線ではなく、シグモイド曲線で示されます。
(2)誤り。確率的影響(がんや遺伝的影響)は、完全に防止することが困難ですので、その発生を最小限に抑える減少が放射線防護の目的です。
(3)正しい。確定的影響では、被ばく線量が増加するにつれて、障害の重篤度も大きくなります。
(4)誤り。確定的影響の程度は等価線量によって評価され、実効線量は、確率的影響の程度の評価に使われます。
(5)誤り。遺伝的影響は、確率的影響に分類されており、確定的影響に分類される遺伝的影響はありません。



問39 放射線による遺伝的影響等に関する次のAからDの記述について、正しいものの全ての組合せは(1)~(5)のうちどれか。

A 生殖細胞の突然変異には、遺伝子突然変異と染色体異常がある。
B 染色体異常は、正常な染色体の配列の一部が逆になることなどにより生じる。
C 胎内被ばくを受け出生した子供にみられる発育遅延は、遺伝的影響である。
D 放射線照射により、突然変異率を自然における値の2倍にする線量を倍加線量といい、ヒトでは約0.05Gyである。

(1)A,B
(2)A,B,C
(3)A,C
(4)A,D
(5)B,C,D


答え(1)
A,B 正しい。
C 誤り。胎内被ばくによる発育遅延は、遺伝的影響ではありません。胎児は一人の個体として考えますので、身体的影響です。
D 誤り。ヒトにおける倍加線量は約1Gyで、0.05Gyではありません。



問40 胎内被ばくに関する次のAからDの記述について、正しいものの全ての組合せは(1)~(5)のうちどれか。

A 着床前期の被ばくでは胚(はい)の死亡が起こるが、被ばくしても生き残り、発育を続けて出生した子供には、被ばくによる影響はみられない。
B 胎内被ばくを受け出生した子供にみられる発育遅延は、確率的影響に分類される。
C 器官形成期の被ばくでは、奇形が発生するおそれがある。
D 胎内被ばくによる奇形の発生のしきい線量は、ヒトでは5Gy程度である。

(1)A,B
(2)A,B,C
(3)A,C
(4)B,C,D
(5)C,D


答え(3)
A,C正しい。
B 誤り。胎内被ばくによる発育遅延は、確定的影響に分類されます。
D 誤り。奇形発生のしきい線量は、5Gyよりももっと低く、0.1Gy程度とされています。

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はじめまして。講師の奥田真史です。エックス線作業主任者の講習会・通信講座なら私にお任せ下さい!
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