X線作業主任者の過去問の解説:管理(2024年4月) | エックス線作業主任者 講習会・通信講座

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X線作業主任者の過去問の解説:管理(2024年4月)

ここでは、2024年(令和6年)4月公表の過去問のうち「エックス線の管理に関する知識(問1~問10)」について解説いたします。

それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。

X線作業主任者の過去問の解説:管理(2024年4月)
X線作業主任者の過去問の解説:法令(2024年4月)
X線作業主任者の過去問の解説:測定(2024年4月)
X線作業主任者の過去問の解説:生体(2024年4月)



問1 エックス線に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)制動エックス線のエネルギー分布は、連続スペクトルを示す。
(2)特性エックス線は、ターゲットの元素に特有な波長をもつ。
(3)特性エックス線は、原子核のエネルギー準位の遷移に伴い、原子核から放出される。
(4)エックス線は、間接電離放射線である。
(5)エックス線の波長λと振動数νとの間には、光の速度をcとすると、
λν=c
の関係が成立する。


答え(3)
(1)は正しい。制動エックス線は連続スペクトルを持ち、エネルギー分布が広がっています。
(2)は正しい。特性エックス線の波長はターゲット元素のエネルギー準位に依存し、固有の値を持ちます。
(3)は誤り。特性エックス線は、電子のエネルギー準位間の遷移によって放出されるものであり、原子核のエネルギー準位の遷移ではありません。原子核からの放射線はγ線です。
(4)は正しい。エックス線は電荷を持たない間接電離放射線で、アルファ線など電荷を持つ放射線は直接電離放射線です。
(5)は正しい。波長と振動数との間には、λν=cの関係が成り立ちます。



問2 エックス線管及びエックス線の発生に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)エックス線管の管電流は、陽極から陰極に向かって流れる。
(2)陰極で発生する熱電子の数は、フィラメント電流を変えることで制御される。
(3)陽極のターゲットはエックス線管の軸に対して斜めになっており、エックス線が発生する領域である実焦点より、これをエックス線束の利用方向から見た実効焦点の方が小さくなるようにしてある。
(4)管電圧がターゲット元素に固有の励起電圧を超える場合、発生するエックス線は、連続エックス線と特性エックス線が混在したものになる。
(5)連続エックス線の発生効率は、ターゲット元素の原子番号と管電圧の2乗との積にほぼ比例する。


答え(5)
(1)は正しい。電流は、電子の移動方向とは逆に、陽極から陰極に向かって流れます。
(2)は正しい。フィラメント電流が熱電子の発生量を制御します。
(3)は正しい。陽極ターゲットの傾斜により、実焦点より小さい実効焦点を得る設計がされています。
(4)は正しい。管電圧が元素固有の励起電圧を超えると、連続エックス線と特性エックス線が同時に発生します。
(5)は誤り。発生効率は、ターゲット元素の原子番号管電圧にほぼ比例します。2乗は不要です。



問3 エックス線装置の管電圧を一定にして、管電流を増加させた場合に、発生する連続エックス線に認められる変化として、正しいものは次のうちどれか。

(1)全強度は、管電流に比例して大きくなる。
(2)最大強度を示す波長は、短くなる。
(3)最短波長は、短くなる。
(4)最大エネルギーは、管電流に比例して大きくなる。
(5)線質は、硬くなる。


答え(1)
(1)は正しい。管電流が増加すると、エックス線の発生量が増え、全強度が比例して大きくなります。
(2)は誤り。最大強度を示す波長(ピーク)は、管電流には影響されません
(3)は誤り。最短波長管電圧に依存し、管電流の変化では変わりません。
(4)は誤り。最大エネルギー管電圧によって決まり、管電流に比例しません。
(5)は誤り。線質(硬さ)管電圧に依存します。管電流が増加しても線質は変わりません。



問4 次のAからDのエックス線と物質との相互作用について、その作用によって入射エックス線が消滅してしまうものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。

A レイリー散乱
B 光電効果
C コンプトン効果
D 電子対生成

(1)A,B
(2)A,C
(3)B,C
(4)B,D
(5)C,D


答え(4)
Aは誤り。レイリー散乱では、入射エックス線はエネルギーを失わず、散乱されるため消滅しません。
Bは正しい。光電効果では、入射エックス線のエネルギーが物質に吸収され、消滅します。
Cは誤り。コンプトン効果では、エックス線が散乱される際、一部のエネルギーが失われますが、完全には消滅しません。
Dは正しい。電子対生成では、高エネルギーエックス線が消滅し、電子対が生成されます。



問5 単一エネルギーで太い線束のエックス線が物質を透過するときの減弱及び再生係数(ビルドアップ係数)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)再生係数は、入射エックス線のエネルギーや物質の種類によって異なる。
(2)再生係数は、物質への照射面積が大きいほど大きくなる。
(3)再生係数は、物質の厚さが薄くなるほど小さくなる。
(4)再生係数は、透過後、物質から離れるほど小さくなり、その値は1に近づく。
(5)太い線束のエックス線では、散乱線が加わるため、細い線束のエックス線より減弱曲線の勾配は緩やかになり、見かけ上、減弱係数が大きくなる。


答え(5)
(1)は正しい。再生係数は入射エックス線のエネルギーや物質の特性に依存します。
(2)は正しい。照射面積が大きいほど散乱線の影響が大きくなり、再生係数が増加します。
(3)は正しい。物質が薄くなると、散乱線の影響が減少し、、再生係数は小さくなります。
(4)は正しい。物質から離れるほど散乱線の影響が減少し、再生係数は1に近づきます。
(5)は誤り。太い線束のエックス線は散乱線が加わるため、減弱曲線の勾配が緩やかになり、見かけ上、減弱係数が小さくなります。



問6 次のAからDの事項について、単一エネルギーの細いエックス線束が、ある厚さの物体を透過するときの減弱係数の値に影響を与えるものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。

A 物体を構成する元素の種類
B 物体の厚さ
C 入射エックス線のエネルギー
D 入射エックス線の強度

(1)A,B
(2)A,C
(3)A,D
(4)B,C
(5)B,D


答え(2)
Aは正しい。物質の構成元素が減弱係数に影響します。
Bは誤り。物質の厚さは減弱量に影響しますが、減弱係数そのものには影響しません。
Cは正しい。エックス線のエネルギーは、減弱係数に直接影響します。
Dは誤り。減弱係数はエネルギーに依存するため、強度そのものは影響しません。



問7 下図のように、エックス線装置を用いて鋼板の透過写真撮影を行うとき、エックス線管の焦点から3mの距離のP点における写真撮影中の1cm線量当量率は0.5mSv/hである。
露出時間が1枚につき90秒の写真を週400枚撮影するとき、エックス線管の焦点とP点を通る直線上で焦点からP点の方向にあるQ点を管理区域の境界線の外側にあるようにしたい。
焦点からQ点までの距離として、最も短いものは(1)~(5)のうちどれか。
ただし、3か月は13週とする。

問7表

(1)9m
(2)12m
(3)17m
(4)22m
(5)27m


答え(4)
この問題は、図のQ点が管理区域の境界線の外側にあるとき、エックス線管の焦点からQ点までの最短距離を求めるものです。
なお、管理区域とは、3か月あたり1.3mSvを超えるおそれのある区域です。

まず、3か月当たりの全撮影時間を計算します。

全撮影時間=1枚当たりの露出時間×週の撮影枚数×3か月の週数
 =90/3,600[h/枚]×400[枚/週]×13[週/3か月]
 =130[h/3か月]

次に、P点における3か月当たりの線量当量を計算します。

線量当量=線量当量率×全撮影時間
 =0.5[mSv/h]×130[h/3か月]
 =65[mSv/3か月]

それでは、逆2乗則を使って、エックス線管焦点から管理区域の境界までの距離aを求めましょう。
逆2乗則は、強度が距離の2乗に反比例して減少する法則なので、次のような計算式で表されます。

強度A/強度B=距離b2/距離a2

1.3[mSv/3か月]/65[mSv/3か月]=32[m]/a2[m]
a2[m]=65[mSv/3か月]×32[m]/1.3[mSv/3か月]
a2[m]=65[mSv/3か月]×9[m]/1.3[mSv/3か月]
a2[m]=450[m]
a[m]≒21.2[m]

したがって、Q点が管理区域の境界線の外側にあり、焦点からQ点までの距離として、最も短いものは(4)22mです。



問8 エックス線を鋼板に照射したときの散乱線に関する次の文中の[ ]内に入れるAからCの語句の組合せとして、正しいものは(1)~(5)のうちどれか。

「前方散乱線の空気カーマ率は、散乱角が大きくなるに従って[ A ]し、また、鋼板の板厚が増すに従って[ B ]する。
後方散乱線の空気カーマ率は、エックス線装置の影になるような位置を除き、散乱角が大きくなるに従って[ C ]する。」

(1)A:増加 B:増加 C:増加
(2)A:増加 B:減少 C:増加
(3)A:増加 B:減少 C:減少
(4)A:減少 B:増加 C:減少
(5)A:減少 B:減少 C:増加


答え(5)
A:散乱角が大きくなると(たとえば、30°から60°になると)前方散乱線の量が減少します。
B:板厚が増すと前方散乱線の量が減少します。
C:散乱角が大きくなるにつれ(たとえば、120°から135°になると)後方散乱線の量が増加します。



問9 エックス線を利用する装置とその原理との組合せとして、誤っているものは次のうちどれか。

(1)エックス線マイクロアナライザー ……………… 散乱
(2)エックス線単結晶方位測定装置 ………………… 回折
(3)蛍光エックス線分析装置 ………………………… 分光
(4)エックス線応力測定装置 ………………………… 回折
(5)エックス線CT装置 ……………………………… 透過


答え(1)
(1)は誤り。エックス線マイクロアナライザーは「散乱」ではなく「分光」により元素を特定します。
(2)は正しい。エックス線単結晶方位測定装置は、結晶構造を「回折」により解析します。
(3)は正しい。蛍光エックス線分析装置は、蛍光エックス線を「分光」して元素を同定します。
(4)は正しい。エックス線応力測定装置は「回折」を利用して内部応力を測定します。
(5)は正しい。エックス線CT装置はエックス線の「透過」を利用して画像を構築します。



問10 図のように、検査鋼板に垂直に細い線束のエックス線を照射し、エックス線管の焦点から5mの位置にある測定点Pで、遮蔽板を透過したエックス線の線量当量率を測定した。
遮蔽板として鉄を用いたときの測定点Pにおける線量当量率を、厚さ5mmの鉛の遮蔽板を用いたときの線量当量率以下にするために必要な鉄板の厚さとして、最小のものは(1)~(5)のうちどれか。
ただし、鉄及び鉛の密度及びこのエックス線に対する質量減弱係数は、次のとおりとする。

問10表

(1)22mm
(2)35mm
(3)42mm
(4)45mm
(5)62mm


答え(5)
この問題で必要な公式は、次のとおりです。

①減弱係数[cm-1]=質量減弱係数[cm2/g]×密度[g/cm3]
②半価層[cm]=0.69/減弱係数[cm-1]
③I=I0(1/2)x/h…減弱の式

まず①の公式を使って鉄と鉛の減弱係数を求めます。

減弱係数[cm-1]=0.11[cm2/g]×7.8[g/cm3]
減弱係数[cm-1]=0.858[cm-1]…鉄

減弱係数[cm-1]=0.93[cm2/g]×11.4[g/cm3]
減弱係数[cm-1]=10.602[cm-1]…鉛

続いて②の公式を使って鉄と鉛の半価層を求めます。また、後の計算を考えて単位をmmに直しておきます。

半価層[cm]=0.69/0.858[cm-1]
半価層[cm]≒0.804[cm]
0.804[cm]×10[mm/cm]=8.04[mm]…鉄

半価層[cm]=0.69/10.602[cm-1]
半価層[cm]≒0.065[cm]
0.065[cm]×10[mm/cm]=0.65[mm]…鉛

最後に③の公式に鉄と鉛の半価層と問題文で与えられている「厚さ5mmの鉛の遮へい板」を代入します。

I=I0(1/2)x[mm]/8.04[mm]…鉄

I=I0(1/2)5[mm]/0.65[mm]…鉛

それぞれの式は指数の部分以外が同じです。ですから指数の部分を抜き出して計算することができます。

x[mm]/8.04[mm]=5[mm]/0.65[mm]
x[mm]≒61.8[mm]

したがって、鉄板の厚さとして、最小のものは(5)62mmが正解です。


講師のご紹介

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はじめまして。講師の奥田真史です。エックス線作業主任者の講習会・通信講座なら私にお任せ下さい!
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