エックス線作業主任者の「エックス線」ってなに?
エックス線の発見
(青柳泰司著 「近代科学の扉を開いた人レントゲンとエックス線の発見」より)
1895年ドイツにあるヴェルツブルク大学物理学研究所で、当時研究所長として物理学を教えていた、ヴィルヘルム・コンラート・レントゲン教授(1845~1923)は真空放電の実験をしていました。
丸いガラス管の両側に陽極と陰極をつけて、ガラス管の中を真空にして、電流を流すという実験でした。真空になると、普段起こらない放電が簡単に起こるため、その陰極線といわれる微粒子(電子)を検出しようと試みたのです。
ある日、真空にしたガラス管に黒い紙をかぶせて部屋を真っ暗にしました。実験前に、とりあえずガラス管の中に放電を起こし、陰極線が黒い紙の覆いを通り抜けないことを確認しようとしました。
すると驚いたことに、90 cmも離して置いていたもの(シアン化白金バリウムの蛍光板)が光を放ったのです。このとき、レントゲンは「これは陰極線によるものではない。何か未知の線によるものだ。」と考え、この未知の線に「X線」と名づけたのです。
X(エックス)とは不可思議なもの、わからないものの代名詞なので、このように名づけられました。
その後、レントゲンは7週間研究所にこもり、エックス線について研究しました。その研究結果を論文として発表し、エックス線発見の功績を称えられ1901年の第1回ノーベル物理学賞を受賞したのです。
その論文には、次のようなエックス線の特徴が記されていました。
(2)エックス線は写真乾板を感光させる(エックス線写真として残せる)。
(3)エックス線は電離作用がある(放電を起こしやすくする作用)。
(4)エックス線は磁場によって曲げられない。
エックス線が世界を変えた
胸部レントゲン写真
たまたま発見されたエックス線は、物体や人体の内部を写しだすことができるため、産業界や医学界になくてはならない存在となりました。
今日エックス線は、どのような場面で使われているのでしょうか?
身近なところでは、空港の手荷物検査で用いられています。手荷物に銃やナイフが無いかを検査するために、エックス線を荷物に当てて透視画像を得ているのです。
これはエックス線の透過度(通り抜けやすさ)を利用した検査です。この通り抜けやすさはごく簡単に言うと、密度と厚さによって変わります。
紙1枚やアルミホイル1枚くらいなら、エックス線はスイスイと通り抜けますが、鉛のかたまりなどは物質にエネルギーが吸収されてしまい通り抜けることができないのです。
その透過の違いを濃淡で示すことによって、スーツケース内の書類や衣服は透けて見え、重い金属のかたまりである銃やナイフの形が浮き出て見えるのです。
他にも医療の分野では、胸部レントゲン写真やCT(コンピュータ断層撮影)、ガン治療などに用いられています。
また、産業分野では船、パイプライン、高圧容器(ボンベ)などの溶接部分にエックス線を当てて透過させ、これを写真や蛍光板に写して観察し、溶接内部の欠陥や構造などを調べる非破壊検査にエックス線が用いられています。
分子の世界では、未知の物質や結晶にエックス線を当てて回折角や強度を測定して、その物質を調査・分析するのに用いられています。宇宙の世界では、宇宙に散らばるエックス線を観測衛星で捉え、星の年齢などを測定するのに用いられています。
このように、エックス線は私たちの生活と深くかかわっているのです。
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