X線作業主任者の過去問の解説:法令(2021年4月)
ここでは、2021年(令和3年)4月公表の過去問のうち「関係法令(問11~問20)」について解説いたします。
それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。
◆X線作業主任者の過去問の解説:管理(2021年4月)
◆X線作業主任者の過去問の解説:法令(2021年4月)
◆X線作業主任者の過去問の解説:測定(2021年4月)
◆X線作業主任者の過去問の解説:生体(2021年4月)
問11 エックス線装置を用いて放射線業務を行う作業場の作業環境測定に関する次の記述のうち、労働安全衛生関係法令上、正しいものはどれか。
(1)測定は、1cm線量当量率又は1cm線量当量について行うものとするが、70μm線量当量率が1cm線量当量率を超えるおそれがある場所又は70μm線量当量が1cm線量当量を超えるおそれのある場所においては、それぞれ70μm線量当量率又は70μm線量当量について、行わなければならない。
(2)線量当量率又は線量当量は、いかなる場合も、放射線測定器を用いて測定することが必要であり、計算によって算出してはならない。
(3)測定を行ったときは、測定日時、測定方法及び測定結果のほか、測定を実施した者の氏名及びその有する資格について、記録しなければならない。
(4)測定を行ったときは、その結果を見やすい場所に掲示する等の方法により、管理区域に立ち入る労働者に周知させなければならない。
(5)測定は、1か月以内(被照射体の位置が一定しているときは6か月以内)ごとに1回、定期に、行わなければならない。
(1)は誤り。測定は「1cm線量当量率または1cm線量当量」について行うものとします。 ただし、「70μm線量当量率または70μm線量当量」が、「1cm線量当量率または1cm線量当量」の「10倍」を超えるおそれがある場所では、「70μm線量当量率または70μm線量当量」で行うものとします。
(2)は誤り。管理区域において、外部放射線による線量当量率または線量当量を、放射線測定器を用いて測定することが著しく困難なときは、計算により算出することができます。
(3)は誤り。エックス線の作業環境測定を実施するに当たり、エックス線作業主任者免許など必要な資格はありませんので、測定実施者の有する資格などは、記録する必要がありません。
(4)は正しい。
(5)は誤り。「被照射体の位置が一定しているとき」ではありません。測定は、1か月以内(放射線装置を固定して使用する場合において使用の方法および「遮へい物の位置が一定しているとき」は、6か月以内)ごとに1回、定期に、行わなければなりません。
問12 エックス線装置を用いる放射線業務に常時従事する労働者で管理区域に立ち入るものに対して行う電離放射線健康診断(以下「健康診断」という。)の実施について、電離放射線障害防止規則に違反しているものは次のうちどれか。
(1)健康診断は、雇入れ又は放射線業務に配置替えの際及びその後6か月以内ごとに1回、定期に、行っている。
(2)放射線業務に配置替えの際に行う健康診断において、被ばく歴のない労働者に対し、医師が必要と認めなかったので、「皮膚の検査」を省略した。
(3)定期の健康診断において、健康診断を行おうとする日の属する年の前年1年間に受けた実効線量が5mSvを超えず、かつ、健康診断を行おうとする日の属する1年間に受ける実効線量が5mSvを超えるおそれのない労働者に対し、医師が必要と認めなかったので、「被ばく歴の有無(被ばく歴を有する者については、作業の場所、内容及び期間、放射線障害の有無、自覚症状の有無その他放射線による被ばくに関する事項)の調査及びその評価」を除く他の項目を省略した。
(4)事業場において実施した健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者について、その結果に基づき、健康を保持するために必要な措置について、健康診断が行われた日から3か月以内に、医師の意見を聴き、その意見を電離放射線健康診断個人票に記載した。
(5)管理区域に一時的に立ち入るが放射線業務に従事していない労働者に対しては、健康診断を行っていない。
(1)(3)(4)(5)は違反していない。
(2)は違反している。雇入れまたは放射線業務に配置替えの際に行う電離放射線健康診断において、使用する線源の種類等に応じて、「白内障に関する眼の検査」を省略することができます。
問13 エックス線装置を用いて放射線業務を行う場合の外部放射線の防護に関する次の措置のうち、電離放射線障害防止規則上、正しいものはどれか。
(1)エックス線装置は、その外側における外部放射線による1cm線量当量率が30μSv/hを超えないように遮へいされた構造のものを除き、放射線装置室に設置している。
(2)工業用のエックス線装置を設置した放射線装置室内で、磁気探傷法や超音波探傷法による非破壊検査も行っている。
(3)放射線装置室には、放射線業務従事者以外の者が立ち入ることを禁止し、その旨を明示している。
(4)エックス線装置を放射線装置室に設置して使用するとき、エックス線装置に電力が供給されている旨を関係者に周知させる方法として、管電圧が150kV以下である場合を除き、自動警報装置によるものとしている。
(5)照射中に労働者の身体の一部がその内部に入るおそれのある工業用の特定エックス線装置を用いて透視を行うときは、エックス線管に流れる電流が定格管電流の2.5倍に達したときに、直ちに、エックス線回路を開放位にする自動装置を設けている。
(1)は誤り。エックス線装置の外側における外部放射線による1cm線量当量率が「20μSv/h」を超えないように遮へいされた構造の装置は、放射線装置室以外の屋内や屋外に設置できます。
(2)は誤り。放射線装置室に、放射線装置以外の装置を設置してはなりません。したがって、磁気探傷法(磁気で傷を探す方法)や超音波探傷法(超音波で傷を探す方法)による非破壊検査の装置を設置し、作業を行ってはなりません。
(3)は誤り。このような規定はありません。事業者は、必要のある者以外の者を放射線装置室に立ち入らせてはなりません。
(4)は正しい。
(5)は誤り。透視の作業を行うときは、定格管電流の「2倍以上」の電流がエックス線管に通じたときに、直ちに、エックス線管回路を開放位にする自動装置を設けることとされています。
問14 エックス線作業主任者に関する次の記述のうち、労働安全衛生関係法令上、定められているものはどれか。
(1)エックス線作業主任者は、エックス線装置を用いて放射線業務を行う事業場ごとに1人選任しなければならない。
(2)エックス線作業主任者は、その職務の一つとして、作業場のうち管理区域に該当する部分について、作業環境測定を行わなければならない。
(3)エックス線作業主任者免許を受けている者で、当該免許に係る業務に現に就いているものは、住所を変更したときは、免許証の書替えを受けなければならない。
(4)エックス線作業主任者を選任したときは、エックス線作業主任者の氏名及びその者に行わせる事項について、作業場の見やすい箇所に掲示する等により、関係労働者に周知させなければならない。
(5)エックス線作業主任者を選任したときは、遅滞なく、所定の様式による報告書を、所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
(1)は誤り。管理区域ごとに、エックス線作業主任者を1人選任しなければなりません。
(2)は誤り。作業環境測定は、エックス線の知識や測定の経験がある者が行うことが望ましいとされていますが、エックス線作業主任者の職務としては法令に規定されていません。
(3)は誤り。免許証の交付を受けた者で、エックス線に係る業務に現に就いている者または就こうとする者は、「氏名」を変更したときは、所定の様式を免許証の交付を受けた都道府県労働局長またはその者の住所を管轄する都道府県労働局長に提出し、免許証の書替えを受けなければなりません。
(4)は定められている。
(5)は誤り。エックス線作業主任者を選任したとき、所轄労働基準監督署長などへの報告や書面の提出は必要ありません。
問15 エックス線装置を取り扱う次のAからEの放射線業務従事者について、管理区域内で受ける外部被ばくによる線量を測定するとき、放射線測定器の装着部位が、労働安全衛生関係法令上、胸部及び腹・大腿(たい)部の計2箇所となるものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。
ただし、女性については、妊娠する可能性がないと診断されたものを除くものとする。
A 最も多く放射線にさらされるおそれのある部位が腹・大腿部であり、次に多い部位が頭・頸(けい)部である男性
B 最も多く放射線にさらされるおそれのある部位が胸部であり、次に多い部位が腹・大腿部である男性
C 最も多く放射線にさらされるおそれのある部位が手指であり、次に多い部位が腹・大腿部である男性
D 最も多く放射線にさらされるおそれのある部位が胸・上腕部であり、次に多い部位が手指である女性
E 最も多く放射線にさらされるおそれのある部位が腹・大腿部であり、次に多い部位が胸・上腕部である女性
(1)A,D
(2)A,E
(3)B,C
(4)B,D
(5)C,E
Aは正しい。胸部および腹・大腿部の計2箇所に装着します。
Bは誤り。胸部の1箇所にのみ装着します。
Cは誤り。胸部、腹・大腿部および手指の計3箇所に装着します。
Dは正しい。胸部および腹・大腿部の計2箇所に装着します。
Eは誤り。腹部の1箇所にのみ装着します。
問16 被ばく線量が次のようになった放射線業務従事者のうち、労働安全衛生関係法令上、速やかに医師の診察又は処置を受けさせなければならないものはどれか。
(1)初めて放射線業務に従事した1年間に受けた実効線量が、30mSvに達した男性の放射線業務従事者
(2)1年間に通常の放射線業務及び緊急作業において皮膚に受けた等価線量が、400mSvに達した男性の放射線業務従事者
(3)緊急作業に従事した1日間に眼の水晶体に受けた等価線量が、200mSvである男性の放射線業務従事者
(4)3か月間に受けた実効線量が、2mSvに達した女性の放射線業務従事者(妊娠する可能性がないと診断されたもの及び妊娠中のものを除く。)
(5)妊娠中に腹部表面に受けた等価線量が、1mSvに達した女性の放射線業務従事者
答え(3)
通常作業時の被ばく限度を超えて、実効線量または等価線量を受けた放射線業務従事者に、速やかに、医師の診察または処置を受けさせなければなりません。
(3)は、通常作業時の眼の水晶体の等価線量の1年間の限度を超えているので、速やかに医師の診察等を受けさせなければなりません。
【関連記事】法令改正による眼の被ばく限度の引き下げ等について
問17 エックス線装置構造規格に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)波高値による定格管電圧が10kV未満のエックス線装置には、この構造規格は適用されない。
(2)エックス線又はエックス線装置の研究又は教育のため、使用のつど組み立てる方式のエックス線装置には、この構造規格は適用されない。
(3)この構造規格が適用されるエックス線装置は、見やすい箇所に、定格出力、型式、製造者名及び製造年月が表示されていなければならない。
(4)この構造規格が適用されるエックス線装置は、医療用のものでも工業用のものでも、エックス線管について必要とされる遮へいの基準は等しい。
(5)この構造規格が適用されるエックス線装置は、照射筒、しぼり及びろ過板を取り付けることができる構造のものでなければならない。
(1)(2)(3)(5)は正しい。
(4)は誤り。この構造規格が適用されるエックス線装置のうち、医療用のものと工業用のものとでは、そのエックス線管について必要とされる遮へい能力が異なります。
問18 労働安全衛生関係法令に基づきエックス線作業主任者免許が与えられる者に該当しないものは、次のうちどれか。
(1)エックス線作業主任者免許試験に合格した満18歳の者
(2)第二種放射線取扱主任者免状の交付を受けた満25歳の者
(3)第一種放射線取扱主任者免状の交付を受けた満30歳の者
(4)診療放射線技師の免許を受けた満35歳の者
(5)原子炉主任技術者免状の交付を受けた満40歳の者
答え(2)
エックス線作業主任者免許は、エックス線作業主任者免許試験に合格した者のほか次の者に対し、都道府県労働局長が与えるものとします。
1.診療放射線技師の免許を受けた者
2.原子炉主任技術者免状の交付を受けた者
3.第1種放射線取扱主任者免状の交付を受けた者
放射線取扱主任者免状には第1種のほか、第2種、第3種があり、第1種が最も上位の免状です。
なお、満18歳未満の者は、エックス線作業主任者免許を受けることができません。
したがって(2)第二種放射線取扱主任者免状の交付を受けた満25歳の者は、免許が与えられる者に該当しません。
問19 次のAからDの場合について、所轄労働基準監督署長にその旨又はその結果を報告しなければならないものの全ての組合せは、(1)~(5)のうちどれか。
ただし、労働安全衛生規則を安衛則、電離放射線障害防止規則を電離則という。A 労働者数が常時50人以上の事業場で、電離則に基づく雇入れ時の電離放射線健康診断を行ったとき。
B 労働者数が常時25人の事業場で、電離則に基づく定期の電離放射線健康診断を行ったとき。
C 放射線装置室を設置しようとするとき。
D 労働者数が常時50人以上の事業場で、安衛則に基づく定期健康診断を行ったとき。
(1)A,B
(2)A,C
(3)A,C,D
(4)B,C,D
(5)B,D
A,Cは報告する必要はない。
Bは報告しなければならない。定期の電離放射線健康診断を実施した場合は、労働者数にかかわらず報告が必要です。
Dは報告しなければならない。常時50人以上の労働者を使用する事業場で、定期の一般健康診断を実施した場合は報告が必要です。
問20 エックス線照射装置を用いて行う透過写真撮影の業務に常時従事する労働者30人を含めて250人の労働者を常時使用する製造業の事業場の安全衛生管理体制として、法令上、選任しなければならないものは次のうちどれか。
(1)総括安全衛生管理者
(2)安全衛生推進者
(3)2人以上の衛生管理者
(4)専任の衛生管理者
(5)専属の産業医
(1)は誤り。製造業で、常時300人以上の労働者を使用する事業場では、総括安全衛生管理者を選任しなければなりません。
(2)は誤り。製造業で、常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場では、安全衛生推進者を選任しなければなりません。
(3)は正しい。常時200人を超え500人以下の労働者を使用する事業場では、衛生管理者を2人以上選任しなければなりません。
(4)は誤り。常時1,000人を超える労働者を使用する事業場または常時500人を超える労働者を使用する事業場で、エックス線にさらされる業務などに常時30人以上の労働者を従事させる事業場では、衛生管理者のうち少なくとも1人を専任の衛生管理者としなければなりません。
(5)は誤り。常時1,000人以上の労働者を使用する事業場またはエックス線にさらされる業務や深夜業を含む業務などに、常時500人以上の労働者を従事させる事業場では、その事業場に専属の産業医を選任しなければなりません。
-
同カテゴリーの最新記事
- 2024/10/20:X線作業主任者の過去問の解説:法令(2024年10月)
- 2024/04/20:X線作業主任者の過去問の解説:法令(2024年4月)
- 2022/04/20:X線作業主任者の過去問の解説:法令(2022年4月)
- 2021/10/20:X線作業主任者の過去問の解説:法令(2021年10月)
- 2021/04/20:X線作業主任者の過去問の解説:法令(2021年4月)