X線作業主任者の過去問の解説:法令(2017年10月)
ここでは、2017年(平成29年)10月公表の過去問のうち「関係法令(問11~問20)」について解説いたします。
それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。
◆X線作業主任者の過去問の解説:管理(2017年10月)
◆X線作業主任者の過去問の解説:法令(2017年10月)
◆X線作業主任者の過去問の解説:測定(2017年10月)
◆X線作業主任者の過去問の解説:生体(2017年10月)
問11 エックス線装置を用いて放射線業務を行う場合の管理区域に関する次の記述のうち、労働安全衛生関係法令上、正しいものはどれか。
(1)管理区域は、外部放射線による実効線量が3か月間につき3mSvを超えるおそれのある区域である。
(2)管理区域には、放射線業務従事者以外の者が立ち入ることを禁止し、その旨を明示しなければならない。
(3)放射線装置室内で放射線業務を行う場合、その室の入口に放射線装置室である旨の標識を掲げたときは、管理区域を標識により明示する必要はない。
(4)管理区域内の労働者の見やすい場所に、放射線業務従事者が受けた外部被ばくによる線量の測定結果の一定期間ごとの記録を掲示しなければならない。
(5)管理区域に一時的に立ち入る労働者についても、管理区域内において受ける外部被ばくによる線量を測定しなければならない。
(1)は誤り。「3mSv」ではありません。管理区域は、3か月間につき『1.3mSv』を超えるおそれのある区域です。ちなみに1.3mSvは、特殊な状況下での年実効線量限度である5mSvを3か月で割り振った値です。
(2)は誤り。このような規定はありません。管理区域には、必要のある者以外の者が立ち入ることが禁止されています。
(3)は誤り。放射線装置室も管理区域も共に、標識により明示する必要があります。
(4)は誤り。個人の被ばく線量などは個人情報ですので、掲示してはなりません。
(5)は正しい。
問12 エックス線装置を用いて放射線業務を行う場合の外部放射線の防護に関する次の措置のうち、電離放射線障害防止規則に違反していないものはどれか。
(1)エックス線装置は、その外側における外部放射線による1cm線量当量率が30μSv/hを超えないように遮へいされた構造のものを除き、放射線装置室に設置している。
(2)工業用のエックス線装置を設置した放射線装置室内で、磁気探傷法や超音波探傷法による非破壊検査も行っている。
(3)放射線装置室には、放射線業務従事者以外の者が立ち入ることを禁止し、その旨を明示している。
(4)エックス線装置を放射線装置室に設置して使用するとき、エックス線装置に電力が供給されている旨を関係者に周知させる方法として、管電圧が150kV以下である場合を除き、自動警報装置によるものとしている。
(5)照射中に労働者の身体の一部がその内部に入るおそれのある工業用の特定エックス線装置を用いて透視を行うときは、エックス線管に流れる電流が定格管電流の2.5倍に達したときに、直ちに、エックス線回路を開放位にする自動装置を設けている。
(1)は違反している。「30μSv/h」ではありません。エックス線装置の外側における外部放射線による1cm線量当量率が20μSv/hを超えないように遮へいされた構造のものは、放射線装置室に設置する必要はありません。
(2)は違反している。放射線装置室は、放射線装置(エックス線発生装置やガンマ線発生装置など)を設置する専用の部屋です。磁気探傷法の検査機器などを置いて検査することはできません。
(3)は違反している。放射線装置室には、必要のある者以外の者が立ち入ることが禁止されています。
(4)は正しい。
(5)は違反している。「2.5倍」ではありません。『2倍』です。
問13 次のAからDまでの事項について、労働安全衛生関係法令上、エックス線作業主任者の職務とされているものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。
A 管理区域の標識が法令の規定に適合して設けられるように措置すること。
B 放射線業務従事者の受ける線量ができるだけ少なくなるように照射条件等を調整すること。
C 管理区域に該当する部分について、作業環境測定を行うこと。
D 外部放射線を測定するための放射線測定器について、1年以内ごとに校正すること。
(1)A,B
(2)A,C
(3)B,C
(4)B,D
(5)C,D
A,Bは正しい。
Cは職務とされていない。エックス線の作業環境測定は、エックス線について知識のある者が実施するのが望ましいですが、作業環境測定士が行うのがベストです。
Dは職務とされていない。放射線測定器の校正は、事業場にて線源を用いて行うか、校正機関に依頼することが多いでしょう。
問14 エックス線装置を用いて放射線業務を行う作業場の管理区域に該当する部分の作業環境測定に関する次の文中の[ ]内に入れるAからCの語句の組合せとして、労働安全衛生関係法令上、正しいものは(1)~(5)のうちどれか。
「作業場のうち管理区域に該当する部分について、[ A ]以内(エックス線装置を固定して使用する場合において使用の方法及び遮へい物の位置が一定しているときは、[ B ]以内)ごとに1回、定期に、作業環境測定を行い、その都度、測定日時、測定箇所、測定結果、[ C ]等一定の事項を記録し、5年間保存しなければならない。」
(1)A=1か月 B=6か月 C=放射線測定器の種類、型式及び性能
(2)A=1か月 B=6か月 C=エックス線装置の種類及び型式
(3)A=6か月 B=1年 C=放射線測定器の種類、型式及び性能
(4)A=6か月 B=1か月 C=エックス線装置の種類及び型式
(5)A=6か月 B=1年 C=測定結果に基づき実施した措置の概要
この問題は、作業環境測定の測定頻度と記録に関するものです。
作業環境測定は、原則『1か月』以内に1回行います。
ただし、エックス線装置を固定して使用する場合において使用の方法及び遮へい物の位置が一定しているときは、『6か月』以内ごとに1回行えば構いません。
記録する事項は、『測定に関係する内容』です。
この記録は5年間保存しなければなりません。
問15 放射線業務従事者の被ばく限度として、労働安全衛生関係法令上、誤っているものは次のうちどれか。
ただし、いずれの場合においても、放射線業務従事者は、緊急作業に従事しないものとする。
(1)男性の放射線業務従事者が受ける実効線量の限度
…… 5年間に100mSv、かつ、1年間に50mSv
(2)男性の放射線業務従事者が眼の水晶体に受ける等価線量の限度
…… 1年間に300mSv
(3)男性の放射線業務従事者が皮膚に受ける等価線量の限度
…… 1年間に500mSv
(4)女性の放射線業務従事者(妊娠する可能性がないと診断されたもの及び妊娠と診断されたものを除く。)が受ける実効線量の限度
…… 3か月間に5mSv
(5)妊娠と診断された女性の放射線業務従事者が腹部表面に受ける等価線量の限度
…… 妊娠中に2mSv
(1)(3)(4)(5)は正しい。
(2)は誤り。放射線業務従事者が眼の水晶体に受ける等価線量の限度は、1年間に『150mSv』を超えないようにしなければなりません。
問16 エックス線装置を取り扱う次のAからDまでの放射線業務従事者について、管理区域内で受ける外部被ばくによる線量を測定するとき、労働安全衛生関係法令に基づく放射線測定器の装着部位が、胸部及び腹・大腿部の計2箇所であるものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。
A 最も多く放射線にさらされるおそれのある部位が胸・上腕部であり、次に多い部位が腹・大腿部である男性
B 最も多く放射線にさらされるおそれのある部位が腹・大腿部であり、次に多い部位が手指である男性
C 最も多く放射線にさらされるおそれのある部位が腹・大腿部であり、次に多い部位が頭・頸部である男性
D 最も多く放射線にさらされるおそれのある部位が手指であり、次に多い部位が腹・大腿部である女性(妊娠する可能性がないと診断されたものを除く。)
(1)A,B
(2)A,C
(3)B,C
(4)B,D
(5)C,D
Aは、胸部の1箇所にのみ装着します。
Bは、胸部及び腹・大腿部の計2箇所に装着します。
Cは、胸部及び腹・大腿部の計2箇所に装着します。
Dは、手指及び腹・大腿部の計2箇所に装着します。
装着部位が、胸部及び腹・大腿部の計2箇所であるものを選択しますので、(3)B,Cが正解です。
放射線測定器の装着部位に関する問題は、超高頻度で出題されますので必ず過去の問題にもトライして解けるようになりましょう。
問17 労働安全衛生関係法令に基づきエックス線作業主任者免許が与えられる者に該当しないものは、次のうちどれか。
(1)エックス線作業主任者免許試験に合格した満18歳の者
(2)第二種放射線取扱主任者免状の交付を受けた満25歳の者
(3)第一種放射線取扱主任者免状の交付を受けた満30歳の者
(4)診療放射線技師の免許を受けた満35歳の者
(5)原子炉主任技術者免状の交付を受けた満40歳の者
答え(2)
まず、①満18歳未満のものは、エックス線作業主任者免許を受けることができません。
年齢についてはすべての選択肢がクリアしていますね。
次に、②下記の者は、申請することでエックス線作業主任者免許が与えられます。
・エックス線作業主任者免許試験に合格した者
・診療放射線技師の免許を受けた者
・原子炉主任技術者免状の交付を受けた者
・第一種放射線取扱主任者免状の交付を受けた者
したがって、『第二種』放射線取扱主任者免状の交付を受けた者には、エックス線作業主任者免許が与えられません。
問18 次のAからEの場合について、所轄労働基準監督署長にその旨又はその結果を報告しなければならないものすべての組合せは、(1)~(5)のうちどれか。
A エックス線作業主任者を選任したとき。
B 管理区域について、法令に基づく定期の作業環境測定を行ったとき。
C 放射線業務に常時従事する労働者で管理区域に立ち入るものに対して、電離放射線障害防止規則に基づく定期の電離放射線健康診断を行ったとき。
D 放射線装置室内の遮へい物がエックス線の照射中に破損し、それによって受ける実効線量が15mSvを超えるおそれのある区域は生じていないが、照射を直ちに停止することが困難な事故が発生したとき。
E 放射線装置室の使用を廃止したとき。
(1)A,B,D
(2)A,C,D
(3)B,C
(4)B,C,E
(5)C,D
A,B,Eは、報告等について規定されていない。
Cは報告しなければならない。ただし、『雇入れまたは放射線業務に配置替え』の際に行う、電離放射線健康診断の結果については報告することは規定されていません。『定期』だけと覚えましょう。
Dは報告しなければならない。事故によって受ける実効線量には関係なく、選択肢のような事故が起これば報告しなければなりません。
問19 エックス線装置構造規格において、工業用等のエックス線装置のエックス線管について、次の文中の[ ]内に入れるAからCの語句又は数値の組合せとして、正しいものは(1)~(5)のうちどれか。
「工業用等のエックス線装置のエックス線管は、その焦点から[ A ]の距離における利用線錐以外の部分のエックス線の空気カーマ率が、波高値による定格管電圧が200kV未満のエックス線装置では、[ B ]mGy/h以下、波高値による定格管電圧が200kV以上のエックス線装置では、[ C ]mGy/h以下になるように遮へいされているものでなければならない。」
(1)A=5cm B=77 C=115
(2)A=5cm B=155 C=232
(3)A=1m B=1.3 C=2.1
(4)A=1m B=2.6 C=4.3
(5)A=1m B=6.5 C=10
エックス線装置構造規格は、エックス線装置の遮へい能力などについて定められたものです。
医療用はもちろん工業用等のエックス線装置にも適用されます。
工業用等のエックス線装置の遮へい能力は、エックス線管の焦点から『1m』の距離の空気カーマ率が、管電圧200kV未満の装置で『2.6mGy/h』以下、管電圧200kV以上の装置で『4.3mGy/h』以下とされています。
問20 エックス線照射装置を用いて行う透過写真撮影の業務に従事する労働者30人を含めて600人の労働者を常時使用する製造業の事業場の安全衛生管理体制について、労働安全衛生関係法令に違反しているものはどれか。
ただし、衛生管理者及び産業医の選任の特例はないものとする。
(1)衛生管理者は、3人選任している。
(2)産業医は、事業場に専属の者ではないが、産業医としての法定の要件を満たしている医師を選任している。
(3)選任している衛生管理者のうち、1人は、この事業場に専属でない労働衛生コンサルタントである。
(4)この事業場に専属の衛生管理者は、衛生管理者としての業務以外の業務を兼任している。
(5)この事業場に専属の衛生管理者のうち、1人は、衛生工学衛生管理者の免許を有している。
(1)は正しい。「500人を超え、1,000人以下」の労働者を常時使用する事業場では、3人以上の衛生管理者を選任しなければなりません。
(2)は正しい。「50人以上」の労働者を常時使用する事業場では、産業医を選任しなければなりません。また、「1,000人以上」または「エックス線にさらされる業務や深夜業に500人以上」の労働者を常時使用する事業場では、その事業場に専属の産業医を選任しなければなりません。いずれかに該当しなければ、事業場に専属ではない産業医を選任すれば構いません。
(3)は正しい。衛生管理者は、原則その事業場に専属の者でなければなりません。つまり、社外の者を衛生管理者として選任することはできません。ただし、衛生管理者を2人以上選任する場合において、そのうち1人については事業場に専属でない労働衛生コンサルタントでも構いません。
(4)は違反している。「1,000人を超える」または「500人を超え、そのうちエックス線にさらされる業務に30人以上」の労働者を常時使用する事業場では、衛生管理者のうち少なくとも1人を専任の衛生管理者としなければなりません。したがって、全ての衛生管理者が業務を兼務しているのは違反です。
(5)は正しい。「500人を超え、そのうちエックス線にさらされる業務に30人以上」の労働者を常時使用する事業場では、衛生管理者のうち1人は、衛生工学衛生管理者免許を受けた者のうちから選任しなければなりません。なお、衛生工学衛生管理者免許は、第一種衛生管理者免許を有する者が所定の講習等を受講することで与えられる免許です。
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